はじめに
国内・海外で年々注目が加速している金継ぎ。
金継ぎとは、割れたり、欠けたり、ヒビが入った器を、漆(うるし)と呼ばれる漆の木の樹液を加工した塗料を用いて修復し、最後に金などのお粉でかわいらしく仕上げる日本の伝統技法です。モノがまだそれほど多くはなかった時代には、壊れたモノを修復してもう一度使うことは当たり前でした。大量生産・大量消費の今も受け継がれるべき、日本の素晴らしい文化だと思います。
この金継ぎを職業にされている日本中の職人さん(「金継ぎスト」と呼んでいます)にインタビューをしました。金継ぎを始めたきっかけや、その想いを伺う中、それぞれの金継ぎストの人生に触れることができ、全く予想もしていなかった発見の宝庫でした!
ミッション
金継ぎを、金継ぎストからの目線で語っていただき、世の中に広く知ってもらう!
今回の金継ぎスト
漆芸社平安堂 藤田直子さん
京都市北区にある大徳寺の目の前にある老舗、漆芸社平安堂。
こちらに勤める藤田直子さんが、快くインタビューをお引き受けくださいました。
場所
漆芸舎平安堂
(株)漆芸舎
〒603-8216
京都府京都市北区紫野門前町14番地
TEL/FAX:075-334-5012
e-mail: info@urushi-artisan.jp
HP: https://shitsugeisya.jimdo.com
人物紹介
漆芸修復師 清川 廣樹さん
40年以上にわたり神社、寺院、美術品などの文化財修復にたずさわる。その技術を活かし、建築、仏像、漆器、アンティーク家具、古美術品などを、身近に存在する自然素材を生かし、日本古来の伝統的技法によって修復。金継ぎ教室・漆芸教室を通じて日本文化を広めている。
(漆芸舎平安堂 ホームページより)
弟子 藤田直子さん
清川さんの元で従事される藤田さん。元々熊本出身で、京都の美術大学で版画をされていたそう。伝統工芸・金継ぎに興味を持ったきっかけは、ある時、漆芸舎平安堂さんの金継ぎ教室を習い、先生である清川さんとお話しして、清川さんの伝統工芸の在り方に対する考え方が前向きで感銘を受けたことから、一緒に働くことを決断されたとのこと。
金継ぎインタビュー
金継ぎの情報発信について
Q: 金継ぎは素晴らしい日本の伝統技法ですが、全ての人に知られているわけではありません。
漆芸舎平安堂さんは京都の大徳寺前という大変良い立地条件にあり多くの方の目に留まるかと思いますが、金継ぎ教室や修理を行っていることを、どのように情報発信されていますか?
「金継ぎに興味がある人が、インターネットで調べて見つけてきます。英語のページもあります。またインスタグラムやFacebookも行っています。」
SNSは更新が大変ですが、アシスタントの西野さんが担当されているとのことです。
職人同士の交流
Q. 他の金継ぎ職人同士の交流はありますか?
「金継ぎではそれほど交流はないですが、修復では職人のコミュニティがあります。塗師屋(ぬしや)さん(漆を塗る専門の方)や蒔絵(まきえ)師、螺鈿(らでん)に特化した方など、専門分野は分業しています。」
金継ぎの需要
Q. 金継ぎのご依頼は増えていますか?
「金継ぎの修理依頼も増えていますが、教室に参加される方がもっと増えています。特に海外からの参加が増えていますね。一日金継ぎ体験教室では、金継ぎのプロセスだけでなく、伐採された漆の木(写真)をお見せして説明しています。漆の木は14~15年育てて漆を取った後、1年で伐採されることや、漆の貴重さを知ってもらいたいんです。」
清川さんと藤田さんは、東京にあるギャラリーで月一回、丸一日かけて金継ぎ教室もされています。
金継ぎを教えるだけでなく、もっと漆のことを深めてもらいたい意図でされて開催されているとのことです。
金継ぎの価格
Q. 金継ぎは高価なイメージがありますが…?
「金継ぎだけではなくて、漆の木のことを知ってもらって、漆の現状とお値段のことを分かってもらいたいと思っています。漆ができるのも、掻き職人さんのおかげです。費用を安くするのはある意味簡単ですが、自分の後に職人としてついてくる方が安くしなければならなくなるので、後継者を育てるという面で考えるところがあります。」
「金継ぎの修理を依頼されるのは高いうつわだけでなく、スターバックスのマグカップなどもあります。安いマグカップが元のお値段以上の7千円ぐらいかかっても、お直しを依頼されたりします。」
持ち主にとっては、それだけ大切な品なんですね。
金粉の価格
Q. 金粉の値段が年々高騰していますが?
「景気に左右されて、不景気だと金は高くなります。道具を作っている職人さんが減っているので、金以外にも全体的に職人さんが使う材料の値段は高騰しています。金継ぎが特別なものになりすぎると育たない…というジレンマがあります。」
金継ぎの手法
Q. 現在「簡易金継ぎ」と呼ばれる、本漆を用いず早く修復できる手法もありますが、漆芸舎平安堂さんでは主にどのような手法を用いていますか?
「清川先生は40年間漆を使ってこられました。ここで漆を使わなくなるのは…という思いからも、本漆を使った伝統的な手法の金継ぎのみで行っています。簡易金継ぎも、モノを直すということでは良いと思います。」
難しいこと
Q. 金継ぎのお仕事をしていて難しいと感じることは?
「金継ぎは漆の乾き具合次第で、予想していたより時間がかかることがあります。事前にそれを見越して、お客様に納期をお伝えするのが難しいです。」
金継ぎに対するポリシー
Q. 藤田さんの、金継ぎに対するポリシーを教えてください!
「お教室では生徒さんは自分より年上の方が多いのですが、教えるというスタンスではなく、一緒にやってるという感じです。世間話とか吸収していけたらいいなと思っています。金継ぎの修復については、基本に忠実にやっていきたいと思っています。」
金継ぎマッチングプラットフォームについて
Q. 金継ぎや伝統工芸を一般の人にもっと普及させ、職人さんにより活躍してもらいたいと思い、MBAのプロジェクトで、インターネット上のマッチングプラットフォームを構築する予定です。
これについて、忌憚のないアドバイスをお願いします。
「職人さんにとっても、そういうアプリとかあったらいいなと思います。ただ、50代を超える方には扱うのが難しいかもしれません。表具をなおしたいとか、こういう筆が欲しいとか、そういうのも解決できるプラットフォームがあったらいいなと思います。」
「あと、職人さんはプロなので、是非私たちに金継ぎを任せてほしいなと思います。」
漆風呂(うるしぶろ)
最後に、立派な漆風呂(うるしぶろ)と、作業場を見せいただきました。
メディア出演
2019年12月、夕方の情報番組キャスト内「澤田あやかのおさんぽだわさ」のコーナーにて漆芸舎平安堂さんの金継ぎ教室の様子が放送されました。
朝日放送(関西6チャンネル)https://www.asahi.co.jp/cast/
最後に
金継ぎ・修復の分野で大変ご活躍の漆芸社平安堂さん。
金継ぎをブームで終わらせず、これからも後世に繋いでいきたいですね。
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